「喜撰」の続きの歌詞を紐解いてみたいと思います。いよいよお梶の登場です。
この写真はもちろん私ではありません。十代目三津五郎丈と坂東玉三郎さんです。
〽︎もしやと簾をよそながら
喜撰の花香 茶の給仕
波立つ胸を押し撫でて
しまりなけれど鉢巻も
幾たび締めて水馴竿
濡れてみたさと手をとって
小野の夕立 縁の時雨
化粧の窓の手を組んで
どう見直して胴ぶるい
今日の御見の初昔
悪性と聞いてこの胸が
朧の月や松の影
わたしゃお前の政所
何時か果報も一森と
褒められたさの身の願い
惚れ過ぎるほど愚痴な気に
心の底の知れかねて
じれったいではないかいな
何故惚れさしたコレ姉え 自惚れ過ぎた悪洒落な
この件は読んで字の如しという感じで、お梶さんはお茶の給仕をしに出てきました。 被衣を被っているところが小町を連想させます。歌詞で「簾」と言っているのも御簾のことで宮殿などで用いるすだれのことです。 先ず喜撰法師がこの被衣を取って、お梶が現れます。 お茶の銘柄が織り込まれたりして、喜撰がお梶に一目惚れする内容です。 「何故惚れさしたコレ姉え」という件が喜撰法師の気持ちを表しているように思います。 いよいよお梶さんが一人踊る件です。
十代目三津五郎丈は、「女方の踊りで、いくつか踊ってみたいと思うものがありますが、お梶はその筆頭です」と
「賤が伏屋に糸とるよりも 主の心が それそれとりにくい エエさりとは 機嫌気褄も普段から 酔うたお客の扱いは 見馴れ聞き馴れ目顔で悟る 粋を通したそのあとは コレひぞり言」
この部分は初演時にはなくて、あとから挿入されたものです。常磐津の「お妻八郎兵衛」の下の巻にあった「賤が伏屋に~」をここに入れて、お梶さんに踊らせました。 元々、他から挿入した詞章なので、喜撰の踊りとの関連はないのですが、 酔ったお客の扱いには慣れているのに、「主の心がとりにくい」=あなたの本心がわからない。というような意味あいでしょうか。
「粋と言われて 浮いた同士」 ここは、浮気者同士お似合いですねみたいなと感じでしょう。
次は、喜撰の「ちょぼくれ」になります。